作品紹介その9は、昨年完結したリアライズPの「if~relations」です。
私はこのPのことをよく知らないのですが、どうやら元はPVを中心に作っていた
方のようで、他の紙クリ中心のノベマスPとは違い、演出面に工夫があります。
ストーリーに関しても、伏線をきかせたしっかりとしたつくりになってます。
画質こそぼやけていますが、グラフィック面をリファインすれば
少なくとも今程度の評価では収まらない作品でしょう。
この作品の凄さは、そもそも誰もやろうとしなかったであろう
ギスギスで崩壊しきった事務所を描いた点にあります。
以下ネタバレになります。
アイドル達の中には派閥といえるものが存在し、お互いそれぞれいがみ合っています。
さらに前任Pは美希と駆け落ちをし、春香は病んでます。
そうでありながら、主人公は粘り強くポジティブに、現実的に関係性を修復しようとします。
この構図は、星里もちる作品を思い浮かべます。もちる作品では常に家(居場所)が出てきます。
主人公は何らかの形で共同体からはじき出されたり、あるいは家族という関係が崩壊したり
騙されたりします。そんな中、主人公は失意に塗れながらも、やがて立ち直り、
そして新しい関係性を築き上げます。
if~relations~も、家ではありませんが、同じように崩壊した共同体の修復、再生を描いた作品です。
もちる作品の主人公のようにプロデューサーもかつて憧れた765プロというユートピアの
再生を目指します。
さて、if~relations~は上記のような作品の魅力の他に、
過去のノベマスを知るのにちょうどいい資料でもあります。
本来SSと同じように、ノベマスも軽快なギャグモノが中心にあるのが普通かなと思うのですが、
当時のノベマスはif~relations~のようなハードな作品が生まれ得る土壌を持っていました。
「春香たちの夜」や「Bullet×M@sters」といった作品が影響をおよぼしていたことが大きいでしょうが
今のような二番煎じっぽい作品ではなく、本作のような荒削りながら魅力的なテーマ性を
持った作品が多かったです。
そういう意味で、if~relations~は今のP達にこそ見て欲しい作品の一つだと、私は思います。
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