愛識です。 巷で不評というか、暴走・分裂・対立・撤退が繰り広げられているアイドルマスター2ですが、不満や文句は取り上げず、敢えてココではどうしてこうなったかを考えていきます。
- 新要素について
さて、いよいよ本題といったところでしょうか。新しい要素についてちょっと考察していきたいと思います。
今回の目玉要素になる(はずの)男アイドルです。
アイドルマスターは基本的に男は単色塗りつぶしで、グラフィックが存在しないのが普通でした。DSで男の娘や一部のキャラグラが開放され、本作では完全な男アイドルとして登場します。
バンナムも男のアイドルを出すリスクを計算してか、DSで様子を見て、2で開放したという感じでしょうか。一部、ニコマスのGSを意識している人もいるようですが、真実は不明です。個人的にはそもそも男アイドルという構想があったのではないかと思います。アイマスの発端がハロプロなら、同じく人気の高いジャニーズも考慮に入れないわけがなく、むしろ全く存在しなかったのが不思議なぐらいでした。
単純に腐女子狙いだと批判する人もいますが、こういった新要素を用いるときは多角的に判断するのが普通ではないでしょうか。幾つかの複合的な要因から、メリットとデメリットを推測する。というわけでちょっとその視点で考えていきたいと思います。
【メリット】
まず、純粋に男のアイドルを出すことで、女性Pを増やすという狙いがあったのではないでしょうか。というより男のアイドルを出す以上、男性Pではなく女性Pへのアピールが主眼なのは当然ですが。
拡大解釈的にアイマスガールズサイドという人もいますが、恐らく純粋に門戸の拡大程度の効果を狙ってのことだと思います。ガールズサイドというほど本格的な狙いはないのではないでしょうか。少なくとも本作で受け入れられれば、あわよくばGS展開も狙っていけるという認識です。
特に現実のハロプロ人気が落ちている一方でジャニーズ人気は健在だという事実を踏まえても、潜在的な需要はあると考えても不思議はありません。
最初にも書きましたが、響・貴音・美希のライバルが結局Pに好意を持ってしまったがゆえに、ライバルとしての迫力にかけてしまったという事実から、男性にすることでライバルとしての危機感を高めようという意図があったのではないでしょうか。
ただし、女性アイドルと男性アイドルだとターゲットがそもそも違うという問題点があり、いささか強引さも見えます。
女性アイドルを男と取り合うという、恋愛ゲームとしての新しい展開。これまで常に1対1な関係だったのを、別の男アイドルを入れることで揺れ動く恋心みたいな展開を考慮していたのでは……? という推測です。最初から与えられている物より、勝ち取ったものの方が愛情を注げるという理論です。所謂ギャルゲーの明らかに負けることが分かっているライバル役を出すことで、安心感と達成感を出すのと近いのではないでしょうか。
インタビューで答えていた「男アイドルと変な関係にはならない」というのは、そういう含みを持たせているのかなと判断しました。
良くも悪くも漫画やアニメ、ゲームでカップリングを考える人達はいます。特に想像しない明後日の方向からカップリングを編み出してくる彼・彼女たちへの新しい材料としての男アイドルです。
ただしコレは副次的な効果で、本筋ではないと思います。アイマスファンがいわゆる「カプ厨」に、ここまで否定的な意見を持つのは想定外だったのではないかと思います。
今回の炎上は、ラブラブ(笑)育成シミュレーションゲームに、カップリングを持ち込むことの危険性を知らしめたのではないでしょうか。
これも本筋とは言い難いですが、バンナムがニコマスMADを知らないわけがなく、恐らく黙認という形をとっていることは想像に難くありません。今まで女性アイドルだけでは表現できなかったものを、男性アイドルで表現する素材としての側面も無きにしもあらずといったところではないでしょうか。副次効果というか、真っ当な狙いとは言い難いですが……。
【デメリット】
ギャルゲーに男子がほとんど存在しないことや、過去のアイマスで男性キャラがほとんど存在しなかったことから、余計な男性キャラは不要だということは理解していたと思います。当然既存ファンへ与える動揺を考慮して、悪魔でもヤラレ役的ライバルポジションとしてジュピターを出そうとしているのは、インタビューから伺えます。
NTRに関しては予め予防線を張って「ない」と明言していますが、NTRというジャンルが与えた不安が予想以上にアイマスファンに影響を与えていたようです。「リア充爆発」という言葉や、ただし「イケメンに限る」という言葉は自虐ネタとして使うのはアリでも、他人から押し付けられると言葉の暴力になります。ましてや信望するアイマスから、そのような物をぶつけられたら、実際以上の衝撃をファンは受け取ったでしょう。アイマス信者という言葉は、かなり的確な言葉だと私は思っています。
男性モデルを作る以上、女性モデルとはハッキリと差別化する必要があるわけで、そこには作り直しレベルの開発コストがかかっていることが予想できます。まして、今までにないモデルである以上、新しいノウハウが必要なわけでバンナム開発陣にとっても大きなリスクだったでしょう。
当然そのようなコストをかけた以上、新しい目玉として売り出す必要があったわけで、9・18事件の悲劇はもはや運命づけられていたといっても過言ではありません。
どうして既存のアイマスファンが望んでもいなかったような、大暴投をやってしまったのか。そこにはお金をかけてしまった以上、それなりの見返りを求めなければならないという企業としての業があった、などと言ってみたりします。
逆に夢子のようなグラフィックだけのキャラであれば、ひっそりとファミ通で情報公開すればいいだけだったのですが……。アレもアイドル同士がくっ付くという、アイマスの常識を覆す出来事だったわけですが、プレイヤが涼自身ということもあって比較的平穏に受け入れられています。
メリットとデメリットは以上です。
単純な星取表だと、メリットの数が多くデメリットの数が少ないのだから採用すべきだとなります。多分バンナム開発陣はもっと色々な情報から様々な可能性を考えて男性アイドルの採用を決めたのだと思いますが、素人考えではこんなところです。
最後は蛇足です。今回の騒動の所感など。
色々書いてきましたが、実際のところ皆さんご存知の通り9・18事件などと揶揄されるような大不評を買ってしまったわけです。俗に言う『9・18事件』は「小町が使えない」「イケメン男性アイドル」「オンライン対戦不可」「AKB商法」(AKB商法については事実が不透明なので触れません)という4種類の要因があると言われています。どれもアイマスファンからはそれぞれ不評を買っているわけですが、人によって受け入れることが出来るものと出来ないものは分かれています。
原因は一つではなく、皆がそれぞれ何かの理由で傷つき、その不満の捌け口を求めようと集団ヒステリーを起こしたというのが騒動の実体ではないでしょうか。twitterであったり動画であったり、様々な伝達手段でアイマスファンは影響を受けました。社会不安は言い過ぎにしろ自分たちの熱中する活動に対する不安(バンナムはファンを蔑ろにしているのではないか)が伝染し、一連の騒動に発展していったと見ます。
例えば9・18事件後のインタビューは空気読めずに火に油を注いでいましたが、制作者の意図は汲み取れたし、団結2010も普通に考えて男性アイドルとのNTRなどではなくPとのイチャつきを想像させるものだったはずです。
またTGS前にファンの期待感が高まりすぎていたというのも、今回の騒動の隠れた要因の一つではないでしょうか。特に既存ファンは保守的な訳で、その保守的なファンに対して過剰なまでのリップサービスを繰り広げておきながら、いきなりマイナス要素を提示しました。浮かれていた分反動も酷いものです。それは裏切られたというネガティブな感情となり……。熱狂的なファンは熱狂的なアンチにも変化するというのは、薄々分かっていたことでしたが、プラスのフィードバックを受けている間はうっかり忘れてしまうものです。
さらに蛇足の蛇足。
今回の騒動を見ていると、よく歴史である「前線での兵士の反乱」を思い浮かべます。国益から考えれば、兵士が最前線でストライキや反乱を起こす事は自殺行為でしか有りません。後の歴史から見れば「こいつらバカだなあ」とついつい思ってしまいます。しかし当の兵士一人一人が前線で国益を考えるのは困難です。自分たちが蔑ろにされ、捨て駒として扱われていると思えば、当然その状況の改善を求めるストライキになったり、反乱になったりします。
某カエサルさんはストライキを起こされたときに、自分が彼らに絶対の信頼を置いていることをアピールし、むしろ相手がその信頼を裏切り自分たちの利益しか考えていないことを仄めかしました。
まあ、ローマの歴史を見ても前線のストライキや反乱で死に至った皇帝は沢山いるわけで、そんな風に綺麗に反乱を収めることが出来るのは限られた人な訳です。
バンナムの「声優さんへの迷惑になるから」的な発言が、ファンをさらに煽っているのを見れば難しいなあと改めて実感します。
僕自身はこの騒動に寄って傷付いたけど、結局受け入れた側の人間です。受け入れられない側の人たちが、バンナムに声を上げることを邪魔する事はできません。結果的にそれでアイマス2がポシャったとしても、原因は巧くコントロールできなかったバンナムにあることは間違いないと思います。ただまあ、どこかで譲渡してもいいんじゃないかなとか、思ったり思わなかったり……。
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